− メスカレロ発売延期の謎 −

 2003年のニューアルバム「メスカレロ」は、当初4/15に発売を予定していた。しかし、直前になって発売が延期され、無事にリリースされたのはその数ヵ月後の9/9だった。この延期理由について、オフィシャルサイトで発表された内容はこうだった。

  • RCAレコードのプロデューサー"クライヴ・ディビス"の方針で延期された。
  • 既に楽曲は全て完成していた。
  • メンバーは何度も話し合った結果、発売延期を承諾した。
  • 「アルバムは素晴らしいものになるだろう」と、ビリー・ギボンズはコメントした。


  •  上のクライヴ・デイビスという人物について少しふれておくと、彼は、40年以上にも及ぶキャリアを持ち、数々の大物バンドをプロデュースしてきた有名なプロデューサーである。古くはジャニス・ジョプリンにも関係し、ロッド・スチュワートやエアロスミス、ビリー・ジョエル、近年ではサンタナの「スーパーナチュラル」を世界的にヒットさせたことでも有名だ。

     発売延期を受けて、ネット上には様々な情報や噂が流れた。そのひとつは、イリミネーター、アフターバーナーが世界的にヒットしたワーナー時代に比べ、RCA移籍後は、セールスが落ち込んでいるというもの。一説によるとRCAとの契約金は3000万ドルと言われ、それに見合ったセールスが無いのだろう。その為に、敏腕プロデューサーが楽曲に手を加え、ヒットさせる必要があると考えるのはとても自然な成り行きだ。
     また、ちょうどこの頃、アメリカがイラクに武力攻撃を始めたために、一種の自粛ムードがあった。特にZZ TOPの場合、ブッシュ大統領(テキサス出身)の非公開の就任パーティーに出席し、演奏をしたという事実も過去にあったのだ。
     いずれにせよ、プロデューサーが発売延期に絡んでいることから、多くのファンは楽曲に手が加えられることを確信した。「余分なことをするな!」という否定的な意見もあれば、「今度は一体どんな新しい音楽に変身するのだろう?」という肯定的な意見も多々あった。

     実は、発売延期のあった4月に、業界向けに配られたプロモ盤を運良く聴くことが出来た。そう、プロデューサー・クライヴの手が入る前の状態だ。その内容はまさに、いつもながらのZZ節であり、どの曲もカッコ良くキャッチーで、そのままでも十分に完成されていた。これが一体どのように変わるのか、それを楽しみに待つこと数ヶ月、やっと9月の始めに新譜「メスカレロ」は発売された。

     ドキドキしながらCDを聴いてみた。何がどう変わったのか? 1曲目から順に聴いていった。タイトル曲「メスカレロ」は、さすがにそのままだ。何も変わっていない。2曲目「トゥー・ウェイズ・トゥー・プレイ」も同じく変わっていない。では、3曲目、これもそのままだ。次の4曲目、さすがZZ TOPはカッコイイ。でも、何も変わっていない・・・。最後まで聴いてみたものの、1曲、隠しトラックがあった以外、変えられた曲は無かった。4月時点のプロモ盤と全く同じなのだ。

     なんとも、つまらないオチで申し訳ないのだが、あの発売延期は何だったのだろう? 1曲の隠しトラックだけに、その時間を費やしたのだろうか? セールスアップを狙うならば、隠しトラックでは無く、もっとハデな演出でないと意味が無いだろうに。謎は深まるばかりあった。
     なお、メスカレロ発売の約1ヶ月後、4枚組みボックスセットがリリースされたが、それに合わせたわけではないと考えている。それぞれレコード会社が違うからだ。それとも、業界全体が低迷しているので、レーベルを越えての作戦だったのか!?

    CDレビュー > メスカレロボックスセット


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